飲ませる経口補水液(ORS)の目安(主に小児)
子どもが吐いた! 下痢した!
脱水を防ぐには、早めに経口補水液を摂取する事が鍵となります。
基本的な経口補水療法としては、「経口補水液を、下痢や嘔吐で出た分だけ補充する」という事になります。1g下痢したら、1mlの経口補水液を飲ませるという事ですね。
が、どのくらい吐いたか、どのくらい下痢したかわからない事が多いでしょう。
ですので、飲ませる目安量を書いておきます。
(脱水がある場合)
最初の4時間→50ml×体重(kg)を少量こまめにわけてあげる
(脱水がない・改善した場合)
出た分だけ補う
わからない場合は、嘔吐や下痢がある度に以下を与える
体重10kg未満:60〜120ml
体重10kg以上:120〜240ml
経口補水療法のコツ
- 吐き気がある時は、一度にごくごく飲むと、その刺激でまた吐いてしまいます。
- スプーン1杯からスタート。赤ちゃんであれば、スポイトなどを使っても構いません。
- 5分ほど時間をあけて、次を飲ませます。
- 吐かなければ、少しずつ量を増やしていきます。
- 途中で吐いた場合は、10分ほど休ませてあげてから、またスプーン1杯からスタート。
- 赤ちゃんの場合、母乳は是非やめずに併用してください。粉ミルクは脱水がなくなれば早めに再開してください。(2ヶ月未満や低月齢で発熱のある赤ちゃんはまず受診)
あくまで目安になります。元気で喉の渇きがなく、おしっこもしっかり出ているようであれば概ね補充できています。
逆に、経過中に以下のような症状が出た場合には受診してください。
感染性胃腸炎受診の目安(主に小児対象)
経口補水液は市販の物を用意する事をお勧めしますが、緊急時には塩と砂糖と水で作成出来ます。レモン汁があると飲みやすくなります。
家でできる簡単な経口補水液(ORS)の作り方〜WHOの自作レシピ〜
(記事は下へ続きます)
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詳しい解説
感染性胃腸炎受診の目安(主に小児対象)
初期補液(脱水がある場合の最初の脱水補正)
喉の渇きがあるようであれば、すでに軽い脱水があると考え、最初にしっかりと経口補水液をあげて脱水を補正してあげます。吐いても元気があって、特に喉の渇きもなくあまり飲みたがらない場合は、この段階は必要ありません。下の項目の「喪失分の補充」の欄に従って、出た分を補ってあげてください。
3〜4時間の間に、50ml×体重(kg)の量を飲ませてあげるのを目標にしてください。(10kgの子どもであれば、50×10=500mlになります。)
例1
- 最初の60分 スプーン1杯(5ml)を5分おきに与える→60ml
- 最初の30分 スプーン1杯(5ml)を5分おきに与える→30ml
- 30分〜60分 スプーン2杯(10ml)を5分おきに与える→60ml(合計90ml)
様子を見て、徐々に量を増やしてあげてください(それでも吐き気があるうちは、ちょっとずつ、ゆっくりが基本です)。
ペットボトルのOS-1であれば横に目盛りが付いています。飲ませた量がわかりやすいのでお勧めです。
喪失分の補充(出て行った分を補うやり方)
脱水がなくなれば、後は出て行った分だけ経口補水液を飲ませてあげましょう。1g吐いたら1mlあげるのが基本になりますが、量がよくわからない時は以下を参考にしてください。
・体重10kg未満
その都度、60〜120mlの経口補水液を与える
・体重10kg以上
その都度、120〜240mlの経口補水液を与える
吐き気がある時は、一気に飲むとその刺激でまた嘔吐しますので、少量を小分けにして飲ませてあげてください。
成人の場合
健康成人の場合は小児よりも脱水に強く(というか予備能がある)、自分で喉の渇きや飲む量の調節ができるため、あまり細かい数字にこだわらなくても大丈夫です。ただし、高齢者や基礎疾患がある場合は、一度受診して指示を仰いでください。嘔吐がある間は、少量をこまめにちびちび飲んでください(コップで1口飲むと、20ml程度入ります。それで吐くようならばスプーンを利用してください)。気持ち悪くても吐かないのであれば量を増やしてOKです。
喉の乾きがある間はちょびちょびと飲み続けます。色の薄い尿がしっかり出るまで続けてください。もし吐いても、吐いた分以上に飲んでいれば、体に吸収されています。
その後は、下痢や嘔吐で出た量と同じ量程度の経口補水液を飲みます。
吐き気が軽くなった場合は早めに食事を再開しましょう。
感染性胃腸炎受診の目安(主に小児対象)
赤ちゃんの場合
母乳をあげている赤ちゃん
おっぱいをあげている子の場合は、経口補水液を飲ませる場合でも是非母乳は継続してください。母乳を併用した方が重症脱水が少ないとされています。ただし、嘔吐中は急に飲むと吐きますので、少し休ませてから「ちょっとずつ、ゆっくり、根気づよく」は変わりません。少しあげて休ませ、様子を見ながら飲ませてあげてください。
経口補水液を嫌がるようであれば、脱水がなければ母乳を多めに飲ませる事で代替できると思いますが、途中で脱水の兆しがあれば受診するようにしてください。(2ヶ月未満の子や、3ヶ月未満で発熱のある子は一度受診して指示をあおいでください)
粉ミルクをあげている赤ちゃん
脱水がある間は先に経口補水液を用いて脱水を補正してあげてください。(薄いおしっこがしっかりでるまで)脱水がなくなり吐き気が改善したら、いつも通りに粉ミルクを再開して大丈夫です。早く再開する事による弊害はないとされています。
ミルクを希釈する必要はありません(過去には希釈するやり方もあったようですが、同じ濃さで大丈夫です)。いつも通りの濃度であげてください。
2ヶ月未満の子や、3ヶ月未満で発熱のある子は一度受診して指示をあおいでください。
経口補水液の準備について
急な嘔吐下痢で家に経口補水液が無い場合には自作する事も可能です。家でできる簡単な経口補水液(ORS)の作り方〜WHOの自作レシピ〜しかし、CDCなどでは、作り間違え・保存が利かない・濃度が一定ではないなどの理由から市販されている経口補水液のストックを勧めています。少量でも構わないので、夏場の熱中症対策含めてストックする事をおすすめします。
市販の経口補水液については後日解説しますが、OS-1で問題ありません。乳幼児でOS-1を飲んでくれない時用にアクアライトORSもおすすめします(小さいので、赤ちゃんでも無駄になりにくいです)。
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大塚製薬工場
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和光堂
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もし自作する場合には、塩と砂糖を入れ間違えるなどの作り間違えには重々お気をつけください。子供にあげる前には、必ず自分で試しに飲んでみることをお勧めします。
参考文献など
小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017年版谷口英喜「経口補水療法」日生気誌 52(4):151–164,2015
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/52/4/52_151/_pdf
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