あなたはトイレの後、手を洗いますか?
「トイレに入ったら手を洗おう」というのは誰でも聞いた事があると思います。
でも、疑問に思った事はありませんか?
「でも、きれいにふいてるし、おしっこもうんちも手についてないよ?」
「別に洗うほど汚れてないし……」
「おしっこだけなら洗う必要ないんじゃない?」
それでは実際にどのくらいみなさんがトイレで手洗いをしているのか、ちょっとアンケートをしてみました。
するとこんな結果に。
女性(女性トイレを使用する方)に質問します。— HAL@37歳女医 (@halproject00) 2017年12月12日
トイレの後、手を洗いますか?
(男性は次のアンケートもご覧ください)
男性(男性トイレを使用する方)に質問します。— HAL@37歳女医 (@halproject00) 2017年12月12日
トイレの後、手を洗いますか?
(女性は前のアンケートに)
男女差はありますが、女性で8割、男性で7割が「必ず洗う」と答えた一方で、洗わない方が多い人も1割前後いる事がわかります。(多分男女で有意差が出ると思いますが、今回はそこまでは検討していません)
消費者庁が過去に行った手洗いの調査では、2000人に調査したところ、15.4%の人がトイレの後に手を洗わないと回答していました。
今回は、この時期に流行する感染性胃腸炎、その原因としてよく知られているノロウイルスの話を例にあげ、いくつか視点を変えながら「トイレに入ったら手を洗おう」の意味を考えてみたいと思います。
(記事は下へ続きます)
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あなたのおしっこやうんちは、あなたの手につかないのか
いろいろ実験している人がいるのですが、「日本トイレ協会メンテナンス研究会報告レポート〔第 140 回〕」なるものでわかりやすい実験をしていました。水様便(水みたいなしゃーしゃー下痢)を墨汁でみたてて、どのくらいトイレットペーパーを貫通するかの実験。
トイレットペーパー36枚でやっと墨汁がついていない事がわかります。
要するに、水っぽい便は、トイレットペーパーを35枚貫通します。恐らく。
あ、おしっこもつきますね。水ですからね。
さて、ノロウイルスに感染していた時、下痢1g中には10億のノロウイルスがいます。
どうでしょうか。おしりをふいたあなたの手、きれいだと思いますか?
「いやいや、下痢じゃないし、そもそも俺、ノロウイルスなんてかかってないよ」
なるほど、確かにそうですね。あなたは下痢じゃないとしましょう。
ところが! ノロウイルスは不顕性感染といって症状が出ない事もあるんです。
そして困った事に、「不顕性感染でも便の中にはノロウイルスが出ています」
もちろん、下痢ではない分、手にはつきにくくなります。
でも、1g中10億のウイルスがいる便をふいた手です。
もしくは、その便がついたおしりと一緒にパンツの中に入っていたイチモツを持って排尿した手です。
さて、あなたの手、本当にきれい?
トイレの水は飛び散る、そしてウイルスはまき散らかされる
あなたはきれいにトイレをすませ、おしっこもうんちも手につける事なく無事に用を足したとしましょう。さあ、ドアを開ける時がきました。
ちょっと待って、そこきれい?
さっき使った人、Aさん(仮名)。実はノロウイルスに感染していたかもしれません。実はしゃーしゃー下痢で、駆け込んでトイレ済ませた後かもしれません。
そしてAさんは便をふきます。先ほどの話の通り、Aさんの手にはもちろんウイルスがしっかりついていますね。
そしてトイレを流します。おやおや、「流す」スイッチにも汚れがべったりつきましたよ。
あっ、見てください。トイレの蓋、開けっ放し。トイレの蓋が開けっ放しだと、水は数十cm飛び散ります。流れて行く下痢も一緒に飛び散ります。おやおや、トイレの周りはうんちが沢山ですね。
そしてAさんはドアを開けます。ああっ……汚れた手で、鍵を開け、ドアノブを回しましたね。
そう、あなたは汚していなかったとしても、誰かがそこを汚しているのです。
便器の中、便座、便器の蓋、スイッチ類、トイレットペーパーのカバー、水を流すレバー、鍵、ドアノブ、水道の蛇口……
悪気はなくとも、トイレは、汚れているのです。
潔癖すぎない? そうやって清潔にしすぎるから抵抗力がなくなるのよ
先ほどもいいましたが、ノロウイルスに感染した人の便1gの中には10億個のノロウイルスがいます。そして、ノロウイルスはたったの10〜100個で、感染を起こします。
多くの人は、吐いて下痢して苦しむだけで回復しますが(もちろん、それだけでも十分辛いですが)、乳幼児やご年配の方、基礎疾患のある方は重症化するリスクはやはりあります。脱水で点滴を受けた経験のある人もいるのではないでしょうか。
あなたの抵抗力がどうかについては論じるつもりはありません。
ただ、そのウイルスがついたままの手でトイレから出ると、トイレの外へ沢山のウイルスを持ち出す事になります。
あなたが触ったお店の商品を、誰かが買うかもしれません。
あなたが何の気無しになでた赤ちゃんが、感染するかもしれません。
家族が、あなたの大切な人が、あなたの持ち込んだウイルスで感染してしまうかもしれません。
そうして感染が広がった先にいる人の事を少し考えてみてもらえたらな、と思います。
(ちなみに、ノロウイルスに抗体がどのくらいの期間持続するかについてははっきりした数値が出ていません。半年くらいのようです。またノロウイルス遺伝子型も多くあるため、1シーズン中に何度もかかる人もいます。どうやら「かかって免疫をつけろ」は無理があると考えられます。)
手洗いでノロウイルスは落とせるの?
落とせます。こんな論文が出ています。ノロウイルスに似たネコカリシウイルスを使った実験、手にウイルスをつけてから手洗いをしたものです。水だけで手洗いをしたら、手洗いしない場合の1%にまでウイルスが減りました。
ハンドソープを使って、10秒洗って15秒流水すすぎすると、0.01%
ハンドソープを使って、60秒洗って15秒流水すすぎすると、0.001%
ここまで減らせます。
おすすめは、一番下。ささっと短時間で2回洗うやり方です。大変かもしれません。でも効果は抜群です。
水洗いでは効果が薄いので、是非ハンドソープも使って欲しいのですが、なかったら水だけでも1%まで減らせると考えて、とにかく洗う習慣をつけましょう。
手洗いは大切です
いかに感染力が強いノロウイルスと言えども、身体の中に入らなければ悪さはできません。大きな入り口は、「口」です。
口に触るものは限られています。そのほとんどが「手」です。
手を洗うだけで、かなりのウイルスの侵入を防げます。
ノロウイルスだけではありません。冬場は沢山の病原体がいます。インフルエンザウイルスも、手洗いの効果は抜群です。
手洗いは、少しの時間をかけるだけで、(少なくとも日本では)ほとんどお金もかからない、素晴らしい感染症の予防法の一つです。
トイレの後だけではありません。食事の前、料理を作る前、帰宅時……手を洗うタイミングは沢山あります。
こまめで確実な手洗いで、沢山の病気を防ぎましょう。
以上から、やっぱり「トイレに入ったら手を洗おう」は必要だと私は思いますよ。
参考サイト
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/pdf/risk_commu_norovirus_shiryou4.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000105095.pdf
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/pdf/risk_commu_norovirus_shiryou1.pdf
Duration of Immunity to Norovirus Gastroenteritis : CDC
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/19/8/pdfs/13-0472.pdf
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